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【061】漫画「魔法使いの嫁」5巻/感想:これぞファンタジーの凡作

異形の魔法使いエリアスに、弟子として、嫁として買われた少女チセ。
交流を続けるうち、からっぽだったそれぞれの心にいつしか、いとしい何かが築き上がっていく。
人外と少女が織り成す幻想譚。

漫画ランキングで上位になり、アニメ化プロジェクトも始動している人気シリーズ。

が。

なんとも平坦な作品。
物語としても、漫画としても、構成や画力も、実に平坦。
例えば、少女漫画誌に掲載されて、それなりにファンはつくものの数巻でふんわり終わって、そのまま埋没していく程度の作品。
それが世間では大人気なんですから、首をかしげるばかりです。

幻想譚として、画力が伴っていません。
線がズレてるとか、比重がおかしいということではないんです。
絵柄は整っているし、漫画としては良く描けています。
でも、幻想的な雰囲気の出し方が下手。
絵が固まりすぎなんです。
おぼろさ、はかなさ、そこしれなさ、おそろしさ、そういったものを表現するのに向いていない絵柄です。

妖精スプリガンは、その最たるひとつ。
あれを妖精と言われても、ゆるキャラの間違いじゃないのかと。

更に、今巻で出てきた古き神。
仮面を着けた息の荒い半身半馬と、それに乗った妊婦。
エリアスの説明から、とても恐ろしい存在なんでしょう。
でも、まったく恐ろしさがない。
恐ろしかろうという造作をしているだけ。
作者の作為が透けて見える程度の陳腐さ。

幻想譚はこうだよね、という「形」が好きな人には受ける作品であっても、真から幻想譚に浸りたい人には響かない。
決して、まったく見所が無い、とは言いません。
幻想譚の入門編として見たら、まぁ、悪くはないです。

これで漫画力が高ければ、その筋の傑作になれたかもしれないのに、残念ですね。
幻想譚としても、物語だけをとっても、感じ入るものはなく、あるいはそれらが拙くても乗り越えられるほどの荒削りな力も無く、小さくまとまった佳作。
あまり期待せず、こんなもんかな、程度でいい作品を読みたいなら、どうぞ。
幻想譚っぽい雰囲気を作ろうと努力していることは分かると思いますよ。
いっそ現代舞台のラブコメディにでもした方が向いていたかも知れませんけれど。

あ、同作者の別シリーズは、漫画として更に等級が下なので、ご注意を。

魔法使いの嫁 5 (BLADE COMICS)

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亜人ちゃんは語りたい(1) (ヤンマガKCスペシャル)

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