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【056】漫画「ダンジョン飯」1巻/感想:迷宮が舞台のクッキング・シットコム

迷宮の奥深くで、油断から仲間の一人がドラゴンに食べられてしまった冒険者一行。
食べられた仲間は完全に消化される前なら復活の可能性もあるため、地上に出た一行は再度、迷宮深部を目指そうとするが、手持ちの食料は何一つなく。
かと言って金策などをしている暇も無いため、迷宮内の材料で自給自足しながら進んで行く事を決める。
それは、つまり、迷宮を闊歩する醜い魔物や怪しげな植物を…。
「ヤダーッ!」
仲間のエルフ娘の絶叫がこだましようとも、一行(の一部)は今日も今日とてダンジョン飯に情熱を燃やす!

世界観は、ダンジョン探索型のファンタジー・ロールプレイングゲームのよう。
戦士や魔法使いが迷宮に赴き、ドラゴンやゴブリンと死闘を繰り広げるようなアレ。
とは言っても、この作品は、さして泥臭いような、ダークな部分はほぼ無く、登場人物はほぼ常に清潔な見た目だし、条件付きながらも死んでも生き返るようで、あまり鬱々としたものではありません。
死んだら終わり、薄暗い迷宮の中で、薄汚れた冒険者たちが、痩せ細った大鼠にむしゃぶりつく、とか、そういうダークなファンタジーとしての期待は禁物です。
良くも悪くも和製ライトファンタジーを土台に、作者の解釈が加味されて作られたコメディタッチの料理漫画ですね。

雰囲気としては、アメリカのシットコムシチュエーション・コメディが近いと思います。
野外ロケはほぼ無く、ドールハウスのように真ん中からぶった切られて開かれた部屋の中で、住人たちが毎回てんやわんや。
ジョークの場面では観客の笑い声が入るという、ああいう感じ。
それをファンタジーな世界の迷宮で、主題を料理にして、闇のクリスタルでもやもやぼーんと合成すると出来上がると、こうなるんですね。

面白さとしては、読む側がファンタジーの知識や、迷宮物語のお約束などをどれほど知悉しているかに依存します。
多少なりと知識があったら、クスクス、ニヤリ、と思わず笑いがこぼれること請け合い。
無いと、架空の生物を使った料理をただ見せられて、フーン、だけで終わるんではないでしょうか。
あくまでファンタジーを下地としたコメディの面白さであって、ドラマとしての盛り上がりがあるわけでは無いので。

個人的には、とても面白かったので続刊も当然買っていこうとは思いましたけれど、一点だけ瑕疵が。
ドワーフがシーフの忠告も聞かずに罠を作動させまくる場面。
最後は良い感じにまとめた風になっていましたけれど、罠のプロの話を無視するような行動に、もやもやした気分を覚えてしまいました。
コメディとは言え、ダンジョン物としての土台を崩しているように思えて…。

ま、それを置いてもシットコムの良作ですので、興味があるなら是非。

綺麗なエルフ娘の悲鳴は好きですか。
ジョーイおじさんは、きっと好きな事でしょう。